三河教育研究会

会長挨拶
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思いを受け止め、対話を重ねる

三河教育研究会 会長 鈴木 佳樹

▼コロナ禍3年間の知恵と工夫を生かす
 5月8日から、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが五類に移行しました。各学校の教育活動には今、コロナ禍3年間の知恵と工夫を生かした、ポストコロナにおけるニューノーマルが求められています。

▼「当たり前」「普通」を丁寧に見直す
 4月5日、入学・始業式前日のこと。私はマスクを外し、入学式準備のために登校してくる6年生を正門で出迎えていました。いつものように、特別支援学級の男の子とお母さんに声をかけたところ、お母さんから「どちらさんですか」と返され、言葉を失いました。耳の不自由な方ではありますが、3年間、毎日、あいさつを交わしてきた関係です。その翌日、子ども見守り隊の方からは、「声からすると校長先生だと思うけど間違いないかね」と声をかけられました。
 マスクを外して、私は本来の自分になったつもりでいましたが、保護者や地域、子どもたちにとっては、3年前に着任した、マスクをしている私が本来の私なのだと気づきました。
 ポストコロナにあって、「当たり前」や「普通」について、よりいっそう丁寧に見直していく必要性を強く感じた出来事でした。

▼子どもの今をまるごと受け止める
 激動の時代をたおやかに生き抜き、戦後現代詩の長女と呼ばれた西尾市ゆかりの詩人・茨木のり子さんが、詩『聴く力』の最終連でこう述べています。

だが
どうして言葉たり得よう
他のものを じっと
受けとめる力がなければ

茨木のり子さんは、「話す」ことより、まずは「聴く」こと、「主張する」ことより、まずは「受け止める」こと、と述べています。凛としたまっすぐな言葉が心に響きます。
「まずは受け止める」という考え方は、脈々と受け継がれてきた三河教育の姿勢「はじめに子どもありき」と重なります。いつの時代にあっても、子どもの今をまるごと受け止めることが大切なのです。そして、しっかりとした言葉で、対話を重ねることこそが求められているのではないでしょうか。

▼三河教育研究会の組織の力を高める
 組織の力の高さはコミュニケーションの量に比例します。三河教育研究会においては、会員相互の思いを受け止め、対話を重ねることで、教師の地道な営みを支えていきたいと考えています。
 本会の目的「会員相互の研究を深め、小・中学校教育の推進をはかること」に資するためには、各支部、各部会・委員会、各学校の研修が極めて重要です。それぞれの研修で得られた知見や課題を、丁寧な情報共有を通して受け止め、19万人余の三河の子どもたちの健やかな成長を支える一助としてまいります。
また、三河の子どもたちのための教材「愛知教育文化振興会刊行物」編集には、476人の会員が尽力されています。刊行物の魅力や編集にかける熱い思いを受け止めることで、三河の子どもたちのための、三河の先生方のための刊行物を目指します。
 そして、授業力養成講座は、授業力向上を願う仲間の熱い思いを提案授業や研究協議を通して受け止め、切磋琢磨できるよい機会です。本年度は、豊川市、知立市、安城市で開催します。積極的にご参加ください。

▼むすびに
 最後になりましたが、本年度も、三河のすべての子どもに、三河の教師の手による優れた教育を保障したいという三河教育研究会設立理念の具現化に向けて、12,000人余の会員とともに確かな歩みを進めてまいります。
 関係諸機関の皆様方、諸先輩方には、いっそうのご指導とご支援を賜りますようお願い申しあげます。